「日本では賭博が禁止されてるはずだけど、オンラインカジノって違法じゃないの?」
オンラインカジノというものを知った方の大半はこの様な疑問を抱く事かと思います。
勿論、私もその内の一人でした。
当然ながらオンラインカジノ自体は各国のゲーミングライセンスを取得し、合法的に運営されている物です。
シンガポールなどオンラインギャンブルが法律で禁止されている国も存在しますが、そういった国以外では盛んにオンラインカジノで遊戯が行われています。
が、実は日本では過去にオンラインカジノプレイヤーから逮捕者が出てニュースになった事もあるんです。
まずここで勘違いしないで頂きたいのが、
逮捕=罪
では無いという事です。
警察は疑わしい者をまず逮捕してそれから罪を問います。
それと前提として完全オンライン上で遊戯が行われるオンラインカジノと日本国内で提供されている闇スロやインカジ、裏カジノ等の違法賭博は全くの別物です。これらは真っ黒で完全に違法そのものなので絶対に手を出さないようにしてください。
それでは実際に過去の日本人オンラインカジノプレイヤーの逮捕事件を見ていきましょう。
初の日本国内オンラインカジノプレイヤー逮捕者は2016年3月10日
当時、日本国内初のオンラインカジノ逮捕者という事でネットニュース等でも数多く取り上げられていたのでご存知のかとも多いかと思います。
2016年3月10日に賭博罪の容疑でスマートライブカジノで遊戯していた日本在住の日本人プレイヤー3人が逮捕されました。
3月10日、京都府警サイバー犯罪対策課などは、海外で開設された無店舗型オンラインカジノで賭博をしたとして、大阪府などの3人を単純賭博容疑で逮捕した。
無店舗型オンラインカジノで利用客が逮捕されるのは全国初とみられる。
逮捕容疑はインターネットで接続するオンラインカジノ「スマートライブカジノ」で2月18~26日、「ブラックジャック」で賭博をしたとし、全員が容疑を認めたとのこと。
スマートライブカジノは、英国に拠点を置く登録制のオンラインカジノであり、日本語版サイトは2014年9月頃に開設された。日本語版の一当たりの売上高は約95万円(年換算では約3.5億円)。
利用者は会員登録し、クレジット決済の代行業者、電子マネーを通じて、外貨に換金し、賭博(賭け、払い戻し)する仕組み。
京都府警は2015年10月にサイトを発見。日本語版サービスは、ディーラーが日本人で、開業時間が日本時間の夕方から深夜に設定されていたから、京都府警は、事実上、国内の日本人向けにカジノが提供されていると判断。
クレジットカードの使用履歴などから容疑者を割り出した。出典:オンラインカジノの利用客で初の逮捕者 必要的共犯の解釈がポイント カジノIRジャパン見解 | カジノ IR ジャパン
賭博罪って・・・?
日本では賭博法によって認可された公営ギャンブルを除く日本国内で行われる賭博の一切が禁止されています。
だったら公営ギャンブルでないパチンコ・パチスロはどうなんだという疑問が出てくる方もいらっしゃるかも知れませんが、今回は別の話なので一旦置いておきましょう。
今回、逮捕されたオンラインカジノプレイヤー3名が利用していたスマートライブカジノはイギリスの企業が運営しているオンラインカジノです。
勿論、ゲーミングライセンスを取得し、合法的に運営されていたオンラインカジノの一つです。(現在では閉鎖されています。)
賭博法でも定められている通り、賭博法の適用は日本国内で行われる賭博に限ります。
例えば日本人が海外のラスベガスやマカオに遊びに行って現地のランドカジノで遊んだとしても法で裁かれる事はありません。
つまり、日本人が日本国内からオンラインカジノで遊ぶ事は違法なのか、合法なのかというのは日本国内の端末から海外のサーバーで運営されているオンラインカジノにアクセスし遊戯する事が「日本国内で行われる賭博」なのか「海外で行われる賭博」なのか、というのが最大の焦点となる訳です。
事件当時の一般的な評論家や弁護士の見解は賛否両論、意見が割れていました。
つまり、この事件によって出される判決によって今後日本人がオンラインカジノで遊ぶのが「黒」なのか「白」なのか決まると言っても過言ではない状況だったのです。
逮捕後の判決にオンラインカジノ業界や世間が大きく注目していた事件でした。
結果は略式起訴
待ちに待った逮捕者三名の判決が出ます。
結果は「略式起訴」の罰金刑10~30万円。
略式起訴とは
検察官が被疑者を起訴する方式として、一般の「公判請求」以外に「略式起訴」があります。前者は、検察官が正式な公判手続を求めて起訴するものである一方で、後者は「100万円以下の罰金又は科料を科す」ことが相当と考えられる事件につき、簡易裁判所に対して、簡略化された手続(いわゆる略式手続)による裁判を求めて起訴する方式です。
「公判請求」がなされた場合には、裁判官の予断を排除するために、起訴時には証拠書類は提出されず、最終的には公開の法廷で審理され「判決」という形式で判断が下されます。しかし、「略式起訴」がなされた場合には、起訴と同時に証拠資料が提出されて、非公開のまま審理され、「略式命令」という形式で判断がなされます。メリットもあるが、合憲性の論点も
略式手続は、争いのない軽微な事件を迅速に処理することにより、訴訟経済に資するとともに、煩わしい刑事手続から被告人を早期に解放するといったメリットもあることから設けられた制度です。他方で、憲法37条1項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と定めていますので、略式手続そのものが、この憲法に違反するのではないかといった疑問があります。しかしながら、略式起訴をする場合、「検察官は、略式命令の請求に際し、被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確かめなければならない」(刑事訴訟法461条の2第1項)と定められていますし、実際に略式命令が出された場合でも、「略式命令を受けた者又は検察官は、その告知を受けた日から14日以内に正式裁判の請求をすることができる」(同法465条1項)と定められていますので、最高裁判所は、制度としての必要性・合理性に照らして、合憲と判断しています。
検察官が都合よく略式手続を利用するケースがある
ただし、検察官が自らに都合よく略式手続を利用することには注意が必要です。すなわち、正式裁判となった場合には、証拠上、有罪の判決を得られない可能性がある事件について、検察官としては「無罪」となるリスクを避けたいといった心理が働きます。無罪判決は、検察官にとっては「負け」を意味するからです。そこで、被疑者の「罰金程度で処理してもらえるのなら、早期に解放されたい」という心理に乗じて、略式起訴とすることに同意してもらい、「略式命令」という形式ではあっても「有罪」を勝ち取ることができるというわけです。
つまり、今回の事件では裁判での判決は出ず、検察官から被疑者に対して容疑を認めさせる形で決着が付いたという形です。
今回逮捕された三名とも略式起訴によって形的には「有罪」を認め罰金である10~30万円を支払った訳ですが、世間的には裁判所から正式な判決が出なかった為、結局オンラインカジノの「違法」「合法」議論は再び闇の中へ。
決着が付かない非常に残念な結果となってしまいました。
しかし、今回の結果を踏まえ専門家から「今回のケースは検察側は裁判所にこの事件を持ち込むと有罪を勝ち取れる見込みが低いと判断した為、略式起訴という形で無理やり有罪を勝ち取りに行ったのでは」という見解も出てきていました。
検察としてもここでリスクを冒し「無罪」という判決が出てしまえば今後日本のオンラインカジノプレイヤーを逮捕する事が非常に困難になってしまい、事実上の「敗北」となる事件でした。
なんとしてでも略式起訴に持っていき名目上の「有罪」を勝ち取りたい気持ちは強かったでしょう。
そこで、被疑者の「罰金程度で処理してもらえるのなら、早期に解放されたい」という心理に乗じて、略式起訴とすることに同意してもらい、「略式命令」という形式ではあっても「有罪」を勝ち取ることができるというわけです。
先ほどの引用分の抜粋ですが、私が被疑者であった場合、確かに略式起訴を受け入れてしまいそうなものです。
今後の動向に注目が集まります。
オンラインカジノ側からはこんな声明も
今回の日本人オンラインカジノプレイヤー逮捕についてオンラインカジノ『ジパングカジノ』からもこの様な声明が送られました。
ジパングカジノ声明
『・・・今後、弊社ブランドでの遊戯にて登録者が逮捕され、それが弊社ブランドと共に公表されることがあれば、貿易上の不公平を訴え、弊社保有ライセンス国を通じWTO(国際貿易機関)に問題提起することを考慮し、また名誉毀損にて当該国裁判所に向けて提訴する事も吝かではありません・・・』
オンラインカジノ側からすればプレイヤーを全面保護する姿勢の様です。
我々プレイヤーからするととても心強い声明であると感じます。
実はこの事件はまだ終わっていなかった
一見、逮捕者3名とも略式起訴による罰金刑(有罪)で終わったかに思えた2016年3月10日に始まった日本人オンラインカジノプレイヤー逮捕事件。
実は逮捕者3名の内の1人が略式起訴による罰金刑を不服とし、検察と争っていた事が明らかになりました。
世間のニュースでは
「オンラインカジノは有罪決定!!」
「ついに日本国内のオンラインカジノ遊戯で逮捕者が結果は罰金刑」
などいとも決着が付いたかのように発表されていたため多くの方がこの事実に気が付かなかったようです。
そして裁判が行われ結果は「不起訴=無罪」。
1人の勇気あるギャンブラーによって日本人がオンラインカジノで遊ぶ事は「無罪」つまり合法であると証明がされました。
当時、被疑者の弁護を担当していた弁護士の方のブログがあります。
賭博罪を専門とする弁護士として,新年早々非常に嬉しい結果を出すことができた。
私は昨年から,いわゆるオンライカジノをプレイしたとして賭博罪の容疑を受けた人の弁護を担当していたのであるが,これにつき,不起訴を勝ち取ったのである。賭博罪の不当性を強く感じている私としても,本件は是が非でも勝ちたい事件であった。
本件のポイントは,いわゆる必要的共犯の論点で語られることが多かったが,私はそれは違うと考えていた。
これのポイントは,被疑者が営利目的のない単なるユーザーであり,罪名も単純賭博罪であるという点である。今の日本は,競馬やパチンコなど,容易に合法的な賭博行為ができる環境が整っている。
つい先日には,カジノ法案も可決された。
そのような状況で,この微罪を適用して刑に処することが刑事政策的に妥当であるとは到底思えない。
単純賭博罪は撤廃すべきというのが私の主張であるし,少なくとも,この罪は今すぐにでも有名無実化させてしかるべきである。本件の特徴は,当該賭博行為につき,海外で合法的なライセンスを得ている一方当事者である胴元を処罰することはできないところ,他方当事者であるユーザーを処罰しようとする点にある。
本件は,主たる地位にある一方当事者を処罰することができないにもかかわらず,これに従属する地位にある当事者を処罰することができるのか,という点が真の論点となる。
結果が出たのは,間違いのない事実である。
本日時点において,オンラインカジノプレイヤーが対象となった賭博罪被疑事件で争った案件は国内でただひとつであり,そのひとつは,不起訴となった。
言うまでもなく,不起訴は不処罰であり,何らの前科はつかない。平たく言うと「おとがめなし」ということだ。
営利の目的なく個人の楽しみとしてする行為を対象とする単純賭博罪の不当性をうったえ続けている弁護士として,この結果を嬉しく思う。そしてちょっぴり誇りに思う。
出典:不起訴の勝ち取りーオンラインカジノプレイヤーの件|賭博罪改正を願う弁護士津田岳宏のブログ
この事件以降、日本国内のオンラインカジノプレイヤーが逮捕されたという事件は一切ありません。
裁判所から無罪という判決が出ているのだから当然ですね。
また、この事件で日本人がオンラインカジノで遊ぶ事が無罪であると確定した為、日本国内のオンラインカジノユーザーは急増傾向にあるようです。
それまでオンラインカジノで遊んでみたいけど踏ん切りが付かなかった層が「無罪」という判決に後押しされて続々とオンラインカジノで遊び始めた結果でしょう。
今後、日本にもIR、カジノ併設型リゾート施設が建設されます。
それに伴ってオンラインカジノに関する法整備も行われていくと思うので、そちらの動向も要チェックです。
しかしながら、現状出ている結果は「日本在住の日本人がオンラインカジノで遊ぶ事は無罪」これが全てです。
日本在住の1オンラインカジノユーザーとして略式起訴を跳ね除け戦った勇気あるギャンブラーと共に戦った弁護士である津田岳宏さんに感謝の言葉を贈らさせて頂きます。
ありがとうございました。

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